11/8公開!映画『100歳の華麗なる冒険』に見るスウェーデン式コメディのあり方

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公式サイトで森百合子の推薦コメントが掲載されています。スウェーデン在住で『ミレニアム』シリーズ翻訳者のヘレンハルメ美穂さんやミュージシャンのカジヒデキさんといったスウェーデン縁の方をはじめ、ピアニストの綾戸智絵さんや書評家の杉江松恋さんなど、個性的なコメント揃いです!

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まず最初に断っておくと、「北欧スウェーデンの映画だからおしゃれで素敵」とか、「100歳の老人が主人公だから、ほのぼの物語」と思ってこの映画を観ると、100%裏切られます!

原作の『窓から逃げた100歳老人』は全世界で800万部を売り上げた大ベストセラー。日本でも映画公開と相まって一気に知名度がアップし、宮部みゆきやら池井戸潤やら有川浩やら村岡花子やら、そうそうたるメンツと並んで書店で平積みされていたり、ベストランキング入りしています。

映画の紹介文には、スウェーデン版『フォレスト・ガンプ』とありますが、私はどちらかといえば『イングロリアス・バスターズ』を思い出しました。あれくらい痛快で、毒っ気たっぷり。原作は『悪童日記』と通じる部分もあります。たとえば日記のような形式で進むところや、現実を冷静に見つめるドライな文体など……といっても悪童に比べて100歳の人生は、ハチャメチャで笑えるネタの満載なのですが。

私が北欧人らしいと思う所作の一つに「真顔でジョークを言う」というのがあります。北欧人って彫りの深い、いわゆるコワモテが少なくないのですが、それで表情をまったく変えずにジョークを言うんですよ、あの人たち。だから最初はジョークだとわからない。段々と「…もしかして今、笑うところだったのだろうか」と気づくわけです。しかもユーモアのセンスが基本的にブラック。この映画はまさにそれで、真顔でギリギリのブラックユーモアをこれでもかと繰り出してくる。

日本では北欧というと福祉が充実している国、幸福度の高い国として有名です。とくにスウェーデンは高齢者福祉の先進国。そのイメージから入ると、100歳のアランの荒唐無稽っぷりやブラックなユーモアのセンスに「なんじゃこりゃ」と驚かれるかもしれません。そもそもこの物語は主人公のアランが、北欧が誇る福祉システムであるはずの老人ホームから逃げ出すところから始まっていますしね。でも思うに北欧人の幸福度が高い理由は、もしかしたらこの映画で描かれているような「ギリギリまで笑ってしまう精神力」の延長線上にあるのかもしれません。歴史的なタブーも悲惨な身の上も笑ってしまう逞しさ、強かさ。主役を演じたロバート・グスタフソンのインタビューにも「スカンジナビアのコメディは不安感に焦点をあてている」とあります。笑っていいのか一瞬とまどうような北欧的ユーモアは、人生を楽しむための知恵なのかもしれない。そして『100歳の華麗なる冒険』は、そんな北欧らしい笑いを思う存分に体験できる映画なのです。

最後に一つ。私はつねづね「スウェーデンは、北欧で一番のイケメン大国」と言っているんですが、残念ながらこの映画にイケメンは一人も出てきません。重要な登場人物は主におじさんで、若い男はスキンヘッドの不良か、生き辛そうな青年のみ。イケメン説を取り下げるつもりはありませんが、これもまたとても北欧らしいと言わざるをえません。北欧ってマイペースでちょっと困った、でも愛すべきおじさんの宝庫なんですよね。

おせちに飽きたらカレーじゃないけど、可愛い北欧に飽きたら、いや飽きなくても、たまにはこんなギリギリの北欧を体験してみては?映画ならではの勢いある展開も、淡々と進みつつジワジワくる原作も、どちらもおすすめ。どちらも全然ほのぼのしません!

100歳の華麗なる冒険 オフィシャルサイト

1件の返信

  1. 2014年11月21日

    […] 名セッションにこのままチーノが恋に落ちてしまうのでは……と思ったほど!(ここに100歳のアランがいたら「いけいけ、人生一度きりだぞ」ってけしかけそう。)そのカップルは隣の […]