バレエに懸けるノルウェー少年を追った濃密な75分間『バレエボーイズ』

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ノルウェーの首都、オスロでバレエダンサーを目指す3人の男子を、4年に渡り追いかけた異色のドキュメンタリー。ルーカス、トルゲール、シーヴェルトは、男性が少数派のバレエの世界で同じ悩みを抱える、ともにかけがえのない友人同士。友達と遊んだり、女の子とデートをしたりといった普通の男の子の楽しみをあきらめて、ひたすらバレエの練習に励んでいます。最初はただ「バレエが好き!」と続けてこられた3人も、だんだん周りと自分の才能を比較したり、親の経済事情がちらついたり、生まれながらの人種や見た目も気になったりと壁に突き当たっていき……。

12歳から16歳へ、顔つきも体つきも、バレエへの情熱も変わっていく3人の4年間を75分間に凝縮した映像は、一瞬たりとも見逃せない濃密さ。ドキュメンタリー作品を得意とするケネス・エルヴェバック監督は「男性がバレエを踊ること」への偏見をさりげなく浮き彫りにし、ジェンダー問題を突きつけてもいます。この監督には他にオスロのゲイのハンドボール・チームを追ったTVシリーズがあるとのこと。それもいつかぜひ観てみたい!

それぞれの少年が将来について両親や先生と話す場面は、とくに印象的。この年齢だと日本ではまだまだ子ども扱いされそうですが、進路や将来について両親も学校も応援しつつも、厳しい現実に向き合うよう率直な言葉を投げかけます。北欧ってすごいなと思ったのが、3人が目指すオスロ国立芸術アカデミー(KHiO)は学費無料ということ!レッスン代にくわえて衣装やお花代など、バレエってとにかくお金がかかるもの。それが学費無料だなんて……つくづく北欧の教育システム、文化や芸術をサポートするシステムは進んでいるなあと感嘆します。同時に、そんな恵まれた環境を離れてイギリスでバレエ団に入るということは、どれだけ親に負担をかけてしまうか……少年にとってそれは大きな壁となる。

ちなみにKHiOがあるのは、オスロのランドマークでもある新国立オペラハウス。北欧を代表するモダンな建築であり、屋根が歩けることでも有名なオスロの観光名所。オスロを訪れたことのある方なら「あの中で踊っているのね…!」と感慨深いのでは。

各家庭にもカメラが入り、背後に映る「いわゆる普通の北欧家庭」インテリアが……やっぱり素敵。ときに友達のように対等な会話を交わす両親との距離感もいい。そして3人がほんのひと時、バレエの練習や悩みから離れて、スーツを着てパーティへ出かけ、ステップを披露するシーンがもう格好いいやら切ないやら!

『バレエボーイズ』の面白いところは、映画を見終えてもまだ彼らのバレエ人生が続いているということ。ロイヤルバレエ団で活躍する様子や、ローザンヌ国際バレエコンクールでの模様など、まるでスピンオフを観ているような、というよりも自分の知り合いががんばっているような気分でついついチェックしてしまいます。でもどうぞ、それは観た後のお楽しみに。3人の進路については知らないまま観た方が絶対に楽しめるはず(オフィシャルサイトのストーリーも、予告編も、観る前は見ない方がいいかも)!

バレエボーイズ オフィシャルサイト