6/9公開。少女の夢を守るのは王子様でなく、おばちゃんなのだ『オンネリとアンネリのおうち』

今年2月に開催された北欧映画祭トーキョーノーザンライツフェスティバルでもひと際目立って、注目されていた本作。フィンランドからやってきた『オンネリとアンネリのおうち』がいよいよ6月から公開されます。

原作は1960年代から愛される、フィンランドを代表する児童文学。北欧の児童文学の例に違わず、本作は子どもたちの置かれた状況もリアルに描いています。兄弟姉妹が多く、幼い弟妹の世話に追われる両親から気にかけてもらえずに「私がいなくても、みんな気づかない」とこぼすオンネリ。両親が離婚して、お父さんとお母さんの間を行き来しているアンネリも、お父さんには既に新しいガールフレンドがいたりと、これまた所在なさげ。

この二人はお互いにとってかけがえのない親友で、二人きりで過ごすのが何よりの楽しみ。ぽちゃっとした頬につぶらな瞳で黒髪のオンネリと、プラチナブロンドに大きなブルーアイズのアンネリという対照的ながら双子のような2人組がある日ひょんなことから、女の子が夢見る世界をそのまま手にしてしまいます。

スクリーンの中は、もうそれはそれは可愛いの大洪水。おそろいのドレスにリボン。ビタミンカラーのニット帽。バレエのチュチュみたいなスカート。ペンキで塗ったような水色のキッチン。泡でいっぱいのバスタブ。カラフルなカーテンにおもちゃみたいなシャンデリア。女の子の夢見る世界が300%増しくらいで実写化された世界がこれでもかと押し寄せ、その可愛さ、美しさには唸るばかり。さすがインテリアの達人!さすがマリメッコの国!さすが柄オン柄、ビビッドにビビッドを平気でかけあわせる人たち!と唸らずにはいられない。「ふわぁ可愛いぃぃぃぃ……❤」とため息が毎秒出てくるような、ため息で息切れしそうな、それはもう密度の濃ゆい画面作りなのです。どれだけ可愛いと叫んでも叫び足りない、そんな本作を見ながらふと思ったのはですね、少女とおばちゃんて表裏一体なんだなあ、ということ。

ピンク色と水色の派手めなサングラスを頭にかけてる姿といい、二人でグフフ……と笑うところといい、オンネリとアンネリって少々、いえ、かなりおばちゃん風味です。あなたの周りにもいませんか、妙におばちゃん然とした幼稚園生とか、おませさんを通り越してどこのマダムだ!と突っ込みたくなるような少女が。そしてこれまたやはりいるでしょう。少女のようなおばさん達も。

二人が住むことになる家の隣人プクティーナとノッポティーナはおばちゃん代表として登場するわけですが、この姉妹がねえ〜またまた可愛いんです。ビンテージ風の髪型に、ひまわりがどんだけ好きなんだと突っ込みたくなるファッションセンスのノッポティーナ。不良少女のような雰囲気で面倒見のよいプクティーナ。キュートなものが大好きで少女の心そのままに歳をとった感じの、ぶっ飛んでて、それでいて優しく頼もしい女性たち。物語の鍵となるバラの木夫人も、優しく頼りになる大人の女性である一方で少女のようなふるまいを見せます。

ああ、この映画は少女も、かつて少女だったおばちゃんたちも、すべての女性を祝福する映画なのだと私は思いました。オンネリとアンネリが過ごす時間を見て、「ああ……私にも、あんな時があったわね……」と目を細めるというよりは「そのコーディネート、私もしたい!」「なにこの家、可愛い!住みたい!」と、もう少女ではない人々もキャッキャと一緒に盛り上がりたくなるような映画。女の子っていいよね!女の子バンザイ!っていう映画なんです。

『オンネリとアンネリのおうち』は少女もおばちゃんも、どちらも魅力的に描いています。対する男性陣たちの描き方は言ってみればかなり淡白。もうこの映画は完全に女性へのエールで満ち溢れてるんです。そんな中、オンネリの弟くんが、なかなかいい働きをするんですけれどね。オンネリと同じく、家族の中に居場所のない弟くんはお姉ちゃんたちに仲間に入れてほしくてつきまとうものの、いつも煙たがられてしまいます。弟&妹、あるあるです。しかし、この弟が結果的にいい仕事をする。嬉しい、私も妹なので、とても嬉しい。弟、がんばった。男子、がんばった。(そしてこの映画における男子の見せ場は、これくらいなのだ!)

対照的といえば、ちょっとしか映りませんが大家族でけたたましい日々を送るオンネリの家は白がベースなナチュラルスタイル。アンネリのお母さんの家はすっきりと物が少ないモダンなテイスト(幼い子どもには味気なく見えるだろうなー)。二人の家族が暮らす家は、少女たちの夢の家とは違うリアルな北欧インテリアなんですよね。私たちの目にはそれでも十分素敵に見えるけれど、あれは北欧の人にとってはごくフツー、なんだろうなあ。

『オンネリとアンネリのおうち』は女の子が持っているパワーの凄まじさを視覚化して、私たちを勇気づけてくれます。そして何より、私たちに女の子でよかったと思い出させてくれる。可愛いものに胸をときめかせ、大好きな友と一緒に好きな世界に没頭する女の子の素晴らしさを描き、「女の子バンザイ」と強く大きくしっかりと書いたメッセージをとっておきの可愛い箱に入れて素敵なリボンを結んで届けてくれる。そしてもうひとつ大切なのは、ここで少女たちの夢の家を守り、彼女たちに手をさしのべ、助けるのは、かつての少女であるおばちゃんたちだということ。「あちらのお嬢さんに、一杯」みたいなノリで「そこの可愛らしいお嬢さん達に、この家を」ってカッコよくふるまっちゃうのは王子様じゃなくて、おばちゃんなのです。そして現実の世界でもそういうこと、あるんじゃない?と思う。

metoo運動にはじまりセクハラや男女不平等に対して声をあげる女性が増えたいま、間違っていることにしっかりと向き合い、弱い立場の人々がこれ以上ひどい目に遭わないように、女性たちはかつてないほど団結しています。ハリウッド女優をはじめ、各業界で発言力のある女性たちが率先して声をあげ、もうそんな悲劇が続かないように、声をあげられない弱い立場の女性のために、毅然とした態度をとり闘っている。なんて素晴らしい権力の、パワーの使い方だろうと思う。

一方でmetoo運動は、女性がこれまでなんと弱い存在で、簡単に虐待を受けてしまう存在だったのかということを改めて考えるきっかけにもなりました。時に女性でいることが悲しいことであるような、女性というだけで負けているような、そうした気持ちになることも実際の世の中にはあります。貧乏くじをひくのは女性だと、あきらめてしまいたくなることもある。でも、そうじゃない。

夢の家を手にして、素敵な大人たちと出会ったオンネリとアンネリはこれからたくさんの素敵な時を過ごして、そして頼もしく愛らしいおばちゃんになっていくのでしょう。いつか彼女たちはプク&ノッポのように、バラの木夫人のようになり、次の世代のオンネリとアンネリにバトンを受け渡すんです。それはずっとずっと続くのだと、この映画は教えてくれる。

よく「オバチャンは若い子に嫉妬する」という構図が描かれますけれど、それ違うんですよね。あれって男の発想ではないか?って私、思うんですよ。違うんですよ。歳取ると若い子を応援したくなるんですよ。しょうもない呪縛とか意地悪とかから守ってあげたくなるんですよ。夢を見る少女を応援し、守りたいって思ってるおばちゃんていっぱいいるんですよ。案外そういうもんなのです。

女の子バンザイ、可愛いものバンザイ、そしておばちゃんバンザイ。それから可愛いもの、こういう世界が好きで大切にしたいと思っている男子もね!可愛いのチカラ、夢見るチカラを信じるすべての人はぜひとも見るべし、な映画なのです。

6月9日〜YEBISU GARDEN CINEMAほか、全国順次公開
『オンネリとアンネリのおうち』公式サイト