小さなものから生まれる、懐かしいフィンランドの景色


青山スパイラルで展示中の、マリアンネ・フオタリによる『KOTISEUTU – The Spirit of Roots』を見てきました。マリアンネは、フィンランドを拠点に活動するアーティスト。展示タイトルにある KOTISEUTU とはフィンランド語でふるさとを意味し、フィンランド北部にあるカイヌー地方の祖父が暮らしていた小さな村をはじめ、湖や木々などマリアンネが子どもの頃に見たフィンランドの景色を、小さな陶のピースで作り上げています。この陶製ピースは一つ一つ手で形を作り、色づけたもの。
こちらに創作風景があるのですが、大きな作品は5000ピースもの陶片を使うそう。気の遠くなりそうな作業です。

会場には陶ピースを使ったモビールも展示・販売してあって、マリアンネの滞在中にワークショップも行われました。


ジオラマもありました。緑の部分には本物の苔を使い、顔を近づけると苔の匂いがして、小さなフィンランドの森が再現されていました。

マリアンネの作品は穏やかな色使い、とくに色のグラデーションが印象的で、聞くとテキスタイルデザイナーの経験が生きているそう。今回の展示のメインとなるウォールラグという形も、伝統的なテキスタイルへの思いが込められているとのこと。確かに陶製ピースが流れるように重なっている様子は、毛足の長いラグのようにも見えます。
彼女が主宰する「STUDIO smoo」のsmooとは古い言葉で「小さい」という意味だそう。「まわりに大きな人が多い中、私はとても小さいから、小さいってことがひとつのアイデンティティになって。小さなものにこそ意味があるって」
会場で会ったマリアンネは本当に小柄。東京で個展ができるなんて、ととても嬉しそうに話していました。ミナ・ペルホネンの皆川さんも彼女の作品を気に入っていたそうで、「この後ミナガワさんに会えるかもしれないの!」と興奮気味に教えてくれました。そういえば彼女の作品を見て、ふとどこかで見た感じ……と思い出したのがスウェーデンの人気ブロガー、エリーサベット・デュンケルのブログでありブランド「Fine Little Day」の世界観。皆川さんはエリーサベットの本の帯にもメッセージを書いていらしたなあ、なんてことも思い出しました。
作品とは色味の違う可愛いブラウスを着ていたマリアンネ。古着だそうで、原宿のシカゴではキモノを手に入れたとか。そうそう、カジュアルなキモノを手に入れたい人には古着屋シカゴ、おすすめなんですよね。

私がフィンランドでよく食べるムイックという小魚が好きと言うと、「あのウォールラグの一番小さな魚はムイックなの」と教えてくれました。大きいのがハウキと呼ばれるカワマスで、どちらもフィンランドの食卓でおなじみの魚。デザインのモチーフとしても見かけます。マリアンネの名前は有名なファッツェルのキャンディと同じだね、などなどフィンランドの食べ物の話でも盛り上がりました。
展示は24日まで、スパイラルホール入口横のMINA-TOにて。小さなアーティストが、小さな陶で作る、素敵なフィンランドの景色。ぜひ見てみてくださいね。