2020年の読んでよかった北欧本ベスト5

今年、読んでとくによかった北欧関連書籍も5冊、選んでみました。

①『スティーグ・ラーソン最後の事件』 ヤン・ストックラーサ著 
世界的に大ヒットした北欧ミステリー『ミレニアム』シリーズの作者、スティーグ・ラーソンが追っていた最後の事件とは? 『ミレニアム』のヒットを見届けることなく急死したラーソンが死の直前まで追っていたのが、いまだ解決されていないスウェーデン元首相オロフ・パルメ暗殺事件。一国の元首が暗殺され、しかも調べていくとなかなかに杜撰な犯行だったことが明らかになっていくのだけれど真相は藪の中。根っこにあるのは人種差別の問題なのか、それとも……。真相に近づくほど深い闇に飲まれるようなルポルタージュで、ラーソンが急死した際もこの事件を追っていたから消されたのでは? なんて噂も出ていたほど(そうではないこともこの中で書かれています)。人物や機関名など登場する固有名詞が多すぎて、たびたび迷子になりそうになるけれど「事実は小説よりも奇なり」を地でいくようなヤバい人物も出てきて引き込まれます。いやあ怖い。何しろこれはリアルな世界で起きていること。スティーグ・ラーソンが描こうとしていた社会の裏側、伝えようとしていたことを、もう一度『ミレニアム』読みながら考えてみたくなりましたね。

②『北欧式インテリア・スタイリングの法則』 フリーダ・ラムステッド著

スウェーデンの人気インテリア・デザイナーが伝授する、”使える”インテリアのテクニックとは。北欧のデザインやインテリアのセンスに惹かれる者としては「待ってました!」の一冊です。照明の位置、色の取り入れ方、物の置き方、飾り方など、部屋づくりで気になる部分の答え合わせをしているよう。感覚的にはなんとなくそうじゃないかなーと思っていたことが、言葉できっちり解説されていて長年の問いが解決した気分です!この本はテキスト中心ですが、これを読んだあと(もしくは読みながら)北欧の部屋の写真を眺めれば「そういうことか〜」と素敵な部屋の法則が見えてくるのではないでしょうか。

③『アストリッドとピッピがおしえてくれたこと』 さわひろあや著
デンマークで図書館司書をされている、さわひろさんによるzine。『長くつ下のピッピ』や作者のアストリッド・リンドグレーンは日本でも深く親しまれている存在ですが、これまであまり語られてこなかったアストリッドの若き日々のことや、北欧における作品の捉えられ方など、新しい切り口でリンドグレーンの世界をのぞくことができます。女性や作家の権利のために闘ったこと、また子どもの孤独に対するアストリッドの共感力の高さについて綴った章は、胸に迫るものがありました。日本では未訳の関連書籍をもとに丁寧に綴られた考察をこうして日本語で読めることに感謝。

デンマークの暮らしや子どもを取り巻く環境について、SNSでも発信しているさわぐりさん。今後もっともっと彼女の書くもの、彼女が切り取る北欧の姿を読みたいなと思っています。

④『スティグ・リンドベリ作品集』 ギセラ・エロン著
スウェーデンを代表するデザイナー、スティグ・リンドベリの作品と活動について彼の人柄や時代背景も交えつつ解説する一冊。2004年発行で現在は絶版となっていた一冊を古本屋さんで発見。著者のギセラ・エロンは美術ジャーナリストで、この方のデザイン解説は本当に学びが多く、読み応えがある!この人が書いた『北欧のテキスタイル』も繰り返し読み返しては、発見がある一冊なのです。

カバー下の本体表紙のデザインもいい〜。陶器、テキスタイル、絵本にイラスト……と多彩な分野で才能を発揮した北欧デザインの巨匠リンドベリ。彼の幅広いデザイン活動の輪郭を知るのに、最適の一冊だと思います。

⑤『北欧の夢』 市河かよ子著
つい先日、ひるねこBOOKSさんで見つけた一冊。昭和24年著。しょ、昭和24年〜〜〜!?? 表紙を見て、少女向け小説かな? と思ったのですが、実録でした。著者の市河かよ子さんとは何者だろうと調べてみたら、沼津出身の外交官でスウェーデンとフィンランドの公使館に勤務していた市河彦太郎氏の妻。沼津市の図書館には彦太郎氏が赴任先で集めた資料を所蔵する市河文庫というのがあるらしい!な、なんだか、すごい一冊と出会ってしまった気がする。これだからリアル書店は楽しいな。まだ読み始めたばかりなんですけれど……

シベさんと会ってる〜〜!……どうやら公使時代に市河夫妻が住んでいた家がシベリウスの娘の家と近く、それをきっかけに親交を深めたそうです。シベさん、いい人らしいです。

一見、少女の空想の物語のような書き出しなんです。それがまた心地よくて、寝る前に異国のお話を聞かせてもらっているような気分。しかしそこに描かれているのは70年前のリアル北欧。うひょー。読みすすめるのが楽しみー。なかなか手に入らない一冊な気がしますが、きっと沼津の市河文庫にはあると思いますっ!