エストニア、セトの暮らしと民族衣装の着方

エストニア南部のセト地方へやってきて、感動的なセトレーロを聴き、温かなおもてなしを受けた翌日は、セトの伝統的な家屋、手工芸、暮らしの姿を伝えるセト・ミュージアムを訪れました。

オビニツァ村にあるセト・ミュージアム。ミュージアムといっても、普通に暮らす家をそのまま見せてもらっているような空間です。

室内にある生活道具はみな近隣の農村から集められたものだそう。ストックホルムにある屋外博物館スカンセンを思いだしました。スウェーデンでモルモルスルータ(直訳するとおばあちゃんの四角という意味。四角っぽいモチーフを繋げて作ることから)の名前で知られるグラニーブランケットもありますね。木の皮を編んでつくるバスケットもあります。

棚に敷いてあるレース編みの十字模様はセト地方の伝統的な柄。セトの旗にも見られる代表的な模様です。

台所には、やはり北欧でおなじみのストーブオーブンが。薪ストーブとオーブン、コンロの機能を兼ね備えたもので、薪を節約して部屋を温め調理もできるというもの。

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伝統刺繍や鮮やかな毛糸だま。ビンに毛糸を飾っているのは、ワークショップで作ったもののようです。ミュージアムではセトの伝統文化に触れられるワークショップも時折開催されているそう。

そしてここでは、昨晩のセトレーロの歌い手さんと同じ民族衣装を着てみることができるというので、挑戦してみました。

ラックにかけられたブラウスは、袖の模様がひとつひとつ違うんですね。赤と白はセトの伝統色だそう。ブラウスは厚めの麻でできていて、着ると袖がかなり太い。もともと作業着として着られていたそうですが、確かに動きやすいです。空気を含んで温かさがありますが、夏も快適そう。

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ブラウスの上に黒地のジャンパースカートを着て、さらにその上に赤いエプロンをします。エプロンの下にはセト模様のベルトを締めます。重ね着の美学。

銀の装飾品は家族で代々受け継がれるもの。女性の乳房のような特徴のある大きな飾りは結婚した女性が身につけるもの。悪いものから女性の胸を守るものと伝えられています。首にかけるとずしりと重い。首にかけているだけで筋トレになりそう。

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さて着るまではすぐだったのですが、頭の支度が思いのほか大変でした。「はい座って」と促され腰掛けると、まず髪の毛を編込み、しめ縄みたいなものを巻かれます。これであの四角っぽいハリを出すんですね。

髪の毛と眉毛を隠すスカーフを巻いた上に、赤いベルトを巻き、さらにその上にもうひとつ、装飾の美しいベルトを巻きます。ここでも重ねる。既婚女性は眉を見せてはいけないそうですが、「さすがにこれ、ちょっと下すぎでは……」と自分で少し手直しをしていたら見つかって、また引き下げられてしまいました(笑。

こうした手の込んだ髪の支度は既婚女性の装いです。手際よく次から次へと支度を進めてもらううち、なんだか嫁にいく娘の気分になってきました……エストニアかあさん、ありがとう。

前の晩の写真を改めて見ると、未婚女性の頭には刺繍やレースをほどこした太いベルト状の布を巻くだけ(中央の人)。簡単です。そして銀の胸を守る装飾は、結婚して孫が生まれるまでつけるものだとか。おばあちゃんになると装飾が減って、スカーフになるんですね。こうして見ると、違いがよくわかります。白いコートはウール製で、冬はこれを着て寒さをしのぐのだそうです。

さて完成です!……と、かあさんと記念写真を撮ってほっとしたのもつかの間

突然、歌い踊り始めるかあさん。とりあえず、くるくるまわってみました(かあさんからは一切説明なし)。

ミュージアムでは展示だけでなく、製品を買うこともできます。ハンドクラフト製品はすべてセト地方の女性たちが作ったもの。セトレーロもそうですが、セト地方の文化を見ていると女性の存在が大きいなあと感じます。

セトの伝統模様が編み込まれた手袋。波のような模様はどことなく和柄っぽくも見えますよね。青と白と黒というエストニア国旗と同じ配色のミトン、思わず買ってしまいました。

セトの文化を伝える書籍や音楽CDなども置いています。

民族衣装を着るのにだいぶ時間がかかって、おみやげを見る時間があまりなかったのですが、この猫、買いたかったなあ……。そう、エストニア行きが決まってぜひ現地で見つけたいと思っていたのが、編みぐるみ。以前、旅博で見たエストニア製の猫の編みぐるみが忘れられず……さて、編みぐるみには出会えるのでしょうか。次回に続きます。