「フィンランドのナチュラルな美味しさ」を味わう


この時期、幕張メッセで開催されるFOODEX JAPANに合わせて、毎年フィンランドの食材メーカーやブランドが来日しています。そのおいしさを実際に体験するレセプションがフィンランド大使館で開催されました。
フィンランド大使の挨拶で会がスタートすると、まず農林省事務次官、ヤーナ・フス-カッリオさんからフィンランドの食事情についてのスピーチがありました。

厳しい寒さで知られるフィンランドですが、じつはその寒さこそが菌や害虫を死滅させ、食品のクリーンさを保つ秘訣であること。フィンランドの食肉は抗生物質なしで飼育され世界でもトップクラスの安全性を誇ること。また食の源となる水についても「フィンランドの水は世界で一番クリーンである」など、なぜフィンランドの食がおいしく、安全性が高いかについての説明がありました。

各メーカーからの簡単な商品紹介があった後、今日の料理を担当したフィンランドの人気シェフ、アルト・ラスタス氏も登壇。ラスタス氏がこのイベントのために来日するのはもう4回目になるでしょうか。2015年の来日時には「分とく山」の野崎洋光さんも参加されていました。その時の様子はこちら→ Food From Finland@フィンランド大使館 
さてお待ちかねのビュッフェです!フィンランドの食材を使ったおいしそうなメニューが並びます。

赤キャベツ、ほうれん草と豆のサラダ、パインビネガー和え。
日本ではグリーンピースは春の味ですが、フィンランドでは夏が近づくとえんどう豆の屋台が街に並び、生のまま食べるのですよね。それがとってもおいしい!そんな温かい季節の到来を感じさせる味でした。

ローストビーツ、ディル風味の大麦添え。大麦はHelsinki Mill社のもの。
フィンランドではよくビーツを食べるのですがミートボールやニシン料理には酢漬けのビーツを添えるのが一般的。こちらはローストしたビーツが主役の一品です。とてもおいしかったので思わずシェフのラスタス氏に伝えると「オーブンでローストするだけのシンプルな調理だからやってみて。皮つきのまま180度くらいで1時間〜1時間半くらいグリルしてね」と。事前に茹でたりはしないそう。
大麦は伝統食材であり、一方で昨今盛り上がるベジタリアン料理などで重宝される再注目の食材でもあります。ヘルシンキのベジタリアンカフェやレストランでもよく見かける食材です。

フィンランド料理の大定番、サーモンはHelsingfors Fiskehamn社のアクアビットでマリネしています。アクアビットなど蒸留酒を使ったマリネもフィンランドではよくある調理法ですが、アクアビットがおいしいと口当たりがまったく違いますね。

そしてシェフ、イチ推しのひと皿がこれ。ジュニパーベリー風味のスモークサーモンと新じゃがのサラダ。グリーンのハーブはフィンランド料理にかかせないディルです。この組み合わせは後を引く味!これも真似してみたいメニューです。
ちなみにシェフに一番好きなじゃがいも料理は何?と尋ねたところ、「新じゃがを茹でて、バターとディルと食べるのが一番」だそうです。フィンランドの人にとっての新じゃがは、日本人にとっての新米のようなもの。シンプルに食べるのがやっぱり一番、なんですよね。


そしてお肉料理。Luomunokka社のオーガニックチキンはヘルシンキ醸造所のウィスキーでグラッセしたもの。Atria社のポークリブはフィスカース醸造所のビール風味。上質なお肉をクラフトビールやウィスキーで調理した贅沢な一品です。HK Scan社の豚肩ロースのローストにはキノコをたっぷりと添えてありました。肉とキノコもフィンランドでは王道の組み合わせ。キノコ狩りの季節になるとレストランでも看板メニューになります。

デザートコーナーも充実!卵や乳製品、ナッツ類などを使わないアレルギーフリーのチョコレートを製造するDammenberg のチョコレートを使ったムースや、Hunajaayhtymaの蜂蜜を添えたレモンプリン、そしてDammenbergのチョコレートトリュフが美しく盛りつけられています。

チョコレートムースにはフィスカース醸造所のビール風味が加えられ、Helsinki Mill社の抹茶味のミューズリーをトッピング。甘すぎないムースはお腹いっぱいでもぺろっと食べられる味。

レモンプリンにはAgras社のイラクサ風味ロングドリンクを使ったシャーベットが添えられます。そう、フィンランドではイラクサもよく使われるんですよね(最初とっても驚きました)。

ドリンクコーナーにはクラフトビールやサイダーが並びます。フィスカース醸造所からはクランベリーゴーゼと、甘めのダークエール。肉料理に合わせてダークエールをいただきましたが、ちょっと甘めの味わいはチョコレートなどにも合いそうです。

ニワトリがトレードマークのLaitilan社のKukkoビールはフィンランドでよく見ます。カジュアルレストランからグルメレストランでも揃えてある人気のビールです。


Laitilan社からはノンアルコールのブルーベリーサイダーやスパークリングウォーターも。ついついお酒に気を取られがちなのですが(笑)、最近フィンランドはクラフトサイダーも盛り上がっています。お口直しにといただいたスパークリングウォーターもとてもおいしかったです!
食事の後は各社のブースで気になる食材を見てまわります。

まず目を引いたのがHelsinki Mills社のミューズリ。デザートのムースに添えられていた味です。ムーミンパッケージは新製品だそうで、近々店頭に並びますとのこと。箱のサイズが大きすぎず、おみやげに良さそうですね。

ムーミンパッケージのマヨネーズも発見。フィンランドのマヨネーズっておいいしんです。スーツケースに余裕があると持って帰るのですが、こちらのムーミンシリーズは知りませんでした。フィンランドではスーパーマーケットで売っているとのことなので、次回ぜひ買って帰ろうと思います!

フィンランドの蜂蜜もいつも買って帰る味なのですが、最近のお気に入りがSaMの蜂蜜です。シンプルなチューブタイプも使いやすいのですが、ムーミンパッケージはやっぱり可愛い。ヘルシンキの空港でも買えるのでおみやげにおすすめ。ミニパックのセットは新商品とのことで、ぜひ試してみたいですね。

SaMからはトウヒを使ったノンアルコールのスパークリングドリンクも出ていました。トウヒはフィンランドのクリスマスにかかせない植物。ぴりっと爽やかな味で、食事にも合いそうです。

お酒も気になる商品がたくさん。ビュッフェでもいただいたフィスカース醸造所のビールはレトロなラベルデザインも素敵です。隣はAgras社のロングドリンク。フィンランドではビールと並んでロングドリンクが人気が高く、各社から出ているのですが最近は味も向上しているんですよね。

Agras社のボトルデザインもかっこいい。クラフトジンも最近フィンランドでは盛り上がっていて、食事に合わせて楽しんだり、カクテルにしたりとさまざまな楽しみ方が提案されています。左のボトルは醸造したビールをさらに蒸留して作るスピリッツ。アルコール度数は52%!泡盛のような味でした。

レトロファッションが似合うAgrasのスタッフさん。

こちらも最近、日本での取扱いがスタートしたヘルシンキ蒸留所(HDCO)のお酒。まだ若い蒸留所で、昨年秋についに最初のウィスキーができ、今回はじめてウィスキーを持っての参加です。ヘルシンキにあるフードコンプレックス『テウラスタモ』内に蒸留所を構え、バーも併設しています。数年前にこのイベントで出会って以来、私はここの味が好きで、たびたび取材させてもらっています。『3日でまわる北欧 in ヘルシンキ 改訂版』でも紹介しているのでヘルシンキで飲んでみたい、という方はぜひチェックしてみてください。写真に写っていませんが、ジンとグレープフルーツを使ったオリジナルロングドリンクもおすすめです!

こちらはフィンランドの人気シェフ、アント・メラニスエミが手がけるクラフトジン、Tenu。おしゃれなラベルは、イッタラの対価シリーズで知られるクラウス・ハーパニエミによるデザインと、フィンランド好きにはぐっとくる組み合わせ。こちらも日本で取扱いが始まり、北欧フェアなどで見かけるようになりました。


さていろいろとご紹介してきましたが、今回とくに心つかまれたのがこれです。オーツチップスです。以前、ライ麦チップスも紹介されそれも大のお気に入りなのですが、オーツもおいしい!塩やハーブ味の他に、ブルーベリーパイやシナモンアップルなどユニークなフレーバーもあり、この甘じょっぱいタイプがすっかり気に入っていしまいました。次回、フィンランドで見つけたらぜひ買って帰りたい味です。
今回のレセプションでは、会が始まる前にこのオーツチップスにビーフやキノコサラダをのせて前菜として食前酒と一緒にふるまわれていたのですが、そんな食べ方もいいですね!

そしてもうひとつ印象に残ったのがこちら。ブルーベリーの濃縮ジュースなのですが、グロッギフレーバーなのです。グロッギとはフィンランドでクリスマス時期に飲むホットワインで、シナモンやクローブ、カルダモンなどスパイスが効いています。赤ワインを使った本家グロッギは甘みもスパイスもガツンと効いているタイプが多いのですが、このジュースはあくまでもブルーベリーの濃厚な味が主役。飲むとかすかに「あ、このスパイスは……」とグロッギの味を思わせるフレーバーが口の奥に広がりました。なんとも上品なグロッギフレーバーのブルーベリージュース、これはぜひまた飲みたい味です。
フィンランドの食を紹介するこのレセプションは毎年参加しているのですが、年々おいしくなっている気がします。日本市場の傾向がわかってきた、というのもあるのでしょうか。フィンランドの食はこれまで繰り返し取材していて、今回もまた今後掘り下げていきたい魅力的な商品や味に出合えました。フィンランドの食は本当にユニークでおいしい。メディアでも北欧の食が取り上げられる機会が増えましたが単なるブームや話題作りで終わらせることなく、フィンランドのおいしさをこれからもレポートしてきたいと思います。
フィンランドの食に興味を持った方、フィンランドでおいしいもの、珍しい味などを試してみたい方はぜひこちらの本も参考にしてみてください!


北欧のおいしい話 スウェーデンのカフェから、フィンランドの食卓まで
森 百合子 著
¥1,600 + 税(2010年9月30日発売)
出版社 スペースシャワーネットワーク