9/20(金)公開。おじさんだってシンクロしたい!映画『シンクロ・ダンディーズ』の北欧要素について

中年男性がシンクロナイズドスイミングに挑戦!?しかも世界大会を目指す……!?思わず二度見したくなる映画のメインビジュアルといい、これは絶対に痛快で愉しいやつでしょ!と期待せずにいられない本作『シンクロ・ダンディーズ』。北欧マニアな方の中には、おじさん&シンクロの組み合わせに「……あれ?」と思った人もいるかもしれません。じつはこれ実話を元にした作品で、映画の舞台はイギリスですが物語のモデルとなっているのは実在するスウェーデンの男子シンクロチームなんです。

本作の元になっているのが、2010年に制作されたドキュメンタリー映画『Men Who Swim』。スウェーデンの男子シンクロナイズドスイミングのチームが世界選手権(非公式)で成功を収めるまでの道のりを追った作品で、国内外で大きな反響を呼びます。その『Men Who Swim』を見たプロデューサーが、ぜひ劇映画にしたい!として生まれたのが本作『シンクロ・ダンディーズ』なんです。

さて肝心の『シンクロ・ダンディーズ』、期待以上にとにかく笑える一本なんですが、一方で「男がシンクロするっておかしいの?」「それも中年男性が?」とジェンダー問題や、中年危機といったテーマもさらりと挟みこんできます。厳しく優しい女性コーチ、スーザンからの「あなた達は厚化粧して作り笑いする必要ないんだから!中年の!苦悩を!表現しなさい〜〜〜!!」との叱咤激励には大笑いしながらも、女性のシンクロのあり方もふと考えてしまう。そう、本作は女性の描き方もいいのです。気力も体力も落ち目になり、自信を失う一方の主人公エリックとは対照的に政治家として着々とキャリアを重ねていく妻ヘザーもまたチャーミングなキャラクター。働く女性、夢を叶えた女性、強い女性というと一面的に捉えられがちですが、ヘザーの愛らしさやエリックとうまくいかない葛藤に、同じような立場の女性たちは勇気づけられ、ほっとするのではないかなと思うのです(演じるジェーン・ホロックスの可愛さと強さと辛辣さの絶妙なミックス具合が最高!)。中年男性の悩みは世界共通だと思いますが、女性の社会進出が当たり前となった社会の裏側で「一緒にいたいのにすれ違ってしまう」と悩む、そんなリアルな中年夫婦のあるある問題の描き方は、思えばスウェーデンに通じる部分と言えるかもしれません。それにしても本作、辛辣でよく練られた台詞のひとつひとつがお見事。笑って笑って泣いてしまうんですよね。

迷える中年男性、そして男はこうあるべきという価値観が息苦しい男性陣、そしてそんなおじさん達とともに生きる女性達に、ぜひ見てほしい作品です。

ちなみに本作公開に先駆けて、同じく『Men Who Swim』を元に作られたフランス版映画『シンク・オア・スイム』も公開していました(なんと2本ともキノフィルムズさんの配給で、おっさんシンクロ祭り企画や見比べ試写会もされていたんです)。昨今、ハリウッドでリメイクされることも多い北欧映画ですが、スウェーデンから生まれたドキュメンタリーがこうして国外に出て2本ほぼ同じタイミングで劇映画になるというのもまた面白い現象ですよね。というわけで、北欧好きも見逃すことなかれ、なのです!

映画『シンクロ・ダンディーズ』の公式サイト

ちなみにこちらがニュース番組で取り上げられたスウェーデンチーム。

制作にあたって、スウェーデンチームのメンバーは快諾してくれたそうで、しかも劇中にも登場する心憎い演出も!とっても「スウェーデン」な感じで登場するのが、また笑えます。