5/3〜公開!スウェーデン映画『シンプル・シモン』の私的見所

Simple-Simon
アスペルガー症候群のシモンが、大好きな兄のため恋人探しに奔走するけれど果たしてうまくいくのか…
『シンプル・シモン』は、アカデミー賞外国語映画賞のスウェーデン代表作に選ばれ、
北欧映画祭トーキョーノーザンライツフェスティバル2012でも大反響をよんだ話題作。
見事、一般公開が決定し、2014年5月3日より渋谷ユーロスペースでの上映を皮切りに
全国で順次ロードショーとなりました。
STORY
物理とSFが大好きなシモンは、気に入らないことがあると自分だけの“ロケット”にこもり、想像の宇宙へ飛び立ってしまう。そんなシモンを理解してくれるのは、お兄ちゃんのサムだけ。でも、シモンのせいでサムは恋人に振られてしまう。彼女がいなくなって、落ち込むサム。そのせいで自分のペースを乱されるシモン。サムに「完璧な恋人」さえいれば、生活が元通りになると考えたシモンは、サムにぴったりな相手を探し始める。そして、偶然出逢った天真爛漫なイェニファーに狙いを定め、ある計画を実行に移すが・・・。(シンプル・シモン公式サイトより)
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先日、試写会に行ってきたので、映画の私的見所を綴ります。
まず目を奪われるのは、シモンとサムが暮らす部屋。
カラフルな壁紙、シンプルで使いやすそうなキッチン。
シモンが考え事を綴る大きなボードをはじめ、部屋を彩る小物もいちいち可愛い。
スウェーデンらしいなあと思います。シモン達の両親の家も、
恋人候補のイェニファーの部屋もやっぱり素敵で「もっと見せて!」と思ってしまう。
スウェーデンは早くから住宅政策に力を入れ、貧富の差なく
誰もが上質な住まいを持てるよう国をあげて取り組んでいます。
障害者や高齢者など社会的弱者の住環境整備についても意識が高い国です。
決してリッチではなかろう彼らが、あんなに素敵な部屋に住んでいるという設定、
スウェーデンだからこそ空々しくなく、説得力があるのですよね。
シモン役のビル・スカルスガルドは、父親に『孤島の王』や『マイティ・ソー』などで
知られる名優ステラン・スカルスガルド、兄に『バトルシップ』のアレキサンダーと
『コン・ティキ』のグスタフをもつ俳優一家の出身。ギョロッとした目つきが印象的で、
独特の存在感とあいまって、ふとスティーブ・ブシェミを思い出しました。
表情がほとんど変わらず、付き合いにくいけれど「どこか憎めない」シモン役はまさにハマり役。
ちなみに『シンプル・シモン』日本語字幕監修を務めた精神科医の山登敬之氏によると
「自閉症スペクトラムの人には、クールなイケメンがよくいる」そうです(映画パンフレットより)。
そういう意味でもビル・スカルスガルドは適役ですね。
思わず心配になるくらい弟思いのサム、誰にも自然にフラットに接するイェニファー、
シモンと同じく障害をもつ仕事仲間たちも、それぞれスピンオフを作ってほしいくらい魅力的。
映画が終わっても、もうちょっと彼らと一緒の世界にいたい、と思わせます。
「キュートでハッピー」「100%幸せになれる映画」という言葉が本当にぴったりの映画。
私はアスペルガー症候群について詳しくないので、この映画での描かれ方が「正しい」のかはわかりません。
でも、秒刻みでスケジュールをきちんと進めたいこと、変化がいやなこと、触れられるのが苦手…
そうした特徴的な症状を自然に知ることができるのはいいなあと思いました。
ちなみに原題の「I rymden finns inga känslor」は、「宇宙には感情がない」という意味。
公式ツイッターでは、「シモンは、宇宙には感情がないから誤解も混乱もないと考えています。
アスペルガー症候群の彼は、他人の感情を理解するのが苦手なのです。」と解説がありました。
日本語字幕監修をされていた山登敬之さんは精神科の先生で、
じつは学生時代にレクチャーを受けたことがあります。
個人的にとても尊敬していた方の監修とあって、
ますますこの映画への好感度、信頼感が高まったのでした。