9/26まで開催中『ボーエ・モーエンセンとFDBモブラー展』@新宿OZONE


9/1(金)~9/26(火)まで新宿のリビングデザインセンターOZONEの3Fで開催中の『ボーエ・モーエンセンとFDBモブラー展』を見てきました。しあわせの国、デザインの国として世界から注目されるデンマークが、どのように美しい暮らしを手に入れていったのか、そもそも豊かな暮らしとは何か?を紐解く展示です。
FDBモブラーとは、デンマーク生活協同組合連合会の家具部門のこと。本展ではその初代企画デザイン担当責任者となったデザイナー、ボーエ・モーエンセンとFDBモブラーの家具づくりについて、その考え方や方法が実際に使われていた図面、オリジナル家具、インタビュー映像などの展示とともに解説されています。

この展示に向けてOZONEでは6月から4回にわたって、FDBモブラーの活動を紹介するレクチャーが開かれていました。講師は日本に北欧デザインを伝える第一人者の島崎信先生。島崎先生は北欧デザイン黄金期の1950年代に日本からデンマークへ派遣され、王立芸術アカデミーで家具デザインを学び、ヤコブセンやボーエ・モーエンセン、ポール・ケアホルムといったデザイナーたちとの交流もあった、まさにデンマークデザインの生き字引ともいえる方です。
その先生が毎回違うゲストを迎えてお話された講義では、デンマークの歴史や実際の暮らし、華やかに取り上げられる北欧デザインの影で実際に生活者に愛されていたデザインとは?などなど、じっくりと学ぶことができました。全4回とも参加してきたのですが「デザインとは、暮らしを豊かにするための解決方法であり、仕組みである」ことが繰り返し説かれていました。デザインとはモノの表面的な飾りではなく、使いやすさや暮らしやすさを支える具体的な解決法であり、例えば福祉や教育のシステムの仕組みづくりもデザインなのだ、と。島崎先生の著書や雑誌の寄稿はこれまでいろいろ読んできましたが、やはり実際にお話を聞けると先生が何を伝えようとしているのか、より理解できた気がします。
そしてその島崎先生が数年前からこういう企画をやりたいと温めていたのが本展なのです。レクチャーではたびたび「暮らしの質をあげるには良い物を作るだけではダメで、それを市民が暮らしに取り入れられるよう啓蒙しなくてはいけない」と先生が話されていましたが、今回のレクチャーや本展はまさにより良い暮らしのための啓蒙活動なのだなと思いました。

FDBモブラーが製作した歴代椅子のオリジナルが展示されています。コペンハーゲンのデザインミュージアムのよう!圧巻です。
デンマークの椅子といえば、ウェグナーやフィン・ユール、ヤコブセンといったデザイナーとその作品がとくに有名ですが、デンマーク本国でもっとも売れた椅子、もっとも愛された椅子を作ったのは、ボーエ・モーエンセンとその後継者だったというお話もありました。

島崎先生曰く「FDBモブラーは収納家具、棚がいい」。食器や洋服など収納するものすべてのサイズを測り、理想的な寸法で作られた棚と図面も展示されています。
初日の夜にはレセプションが開催され、おちゃめな性格で知られるスヴェイネ駐日デンマーク王国大使も出席されていました。やはり挨拶でも会場を笑わせ、沸かせていました。


乾杯の音頭をとる島崎先生。レクチャーでは時に毒舌あり、時に暴走ありと、笑いも絶えませんでした。そして先生の知識と深い理解とデンマークデザインへの愛情には感嘆するばかり。もっともっと先生のお話を聞いてみたいものです。

期間中、会場横にあるザ・コンランショップカフェでは、デンマーク家庭料理の限定ランチを週替りで提供中。その一部をレセプションでも試食させていただきました。

カフェで提供されるメニューは、FDBの出版部門から発行されたレシピ本「mormor mad(おばあちゃんの手料理)」をもとに作ったものだとか。そのレシピ本も展示されています。可愛い〜。


スパイスのきいたキャロットケーキに、本場の味のリスアラマンデ(お米のお粥にさくらんぼのソースをかけたクリスマス伝統の味)。とってもおいしかったですよ〜。こちらもザ・コンランショップカフェで登場します。

島崎先生とデンマーク大使を囲んで、本展を企画した北欧ジャーナリストの堀紋子さん、FDBモブラーの家具を扱うグリニッチの今田憲一さん。ルイス・ポールセンで照明エニグマを手がけたデザイナーの内山章一さんもいらっしゃいました!そして北欧ぷちとりっぷの北欧男子トークでおなじみのエスベンも。デンマークと日本外交関係樹立150周年記念イベントで日々奔走しているようです。9月17日には島崎先生とエスベンのギャラリートークも企画されています。
今回の展示では、コペンハーゲンのデザインミュージアムで2年以上にわたって開催されている「Learning from Japan」展についても解説されています。日本とデンマークのデザイン的なつながり、そしてデンマークデザインとは何かを学び、体感できる貴重な展示を、どうぞお見逃しなく!