スウェーデンの人気者!『長くつ下のピッピの世界展』がスタート


日本と外交樹立150周年を記念してぞくぞく開催されるスウェーデン関連イベントの中でも、楽しみにしていたのがこれ。『長くつ下のピッピの世界展』が東京・八王子の富士東京美術館でスタートしました!
スウェーデンが誇る児童文学作家アストリッド・リンドグレーンの代表作であり、70年以上にわたり世界中の子どもたちに読まれ、愛されてきた名作『長くつ下のピッピ』。その魅力を原画やリンドグレーンの人生とともに紹介する展示で、東京会場の後は宮崎、京都、名古屋、福岡、愛媛など全国を巡回する予定です。富士東京美術館にて、オープン前日に開催された内覧会に行ってきました。

今回の展示のためにスウェーデンからアストリッド・リンドグレーンのお孫さん、マリン・ビリングさんが来日され内覧会前のプレス発表でスピーチをされました。「祖母は私たち孫をよく家に招いてくれました。その一方で彼女は世界を変えていたんですね」という言葉が印象的。「世界中から届く子どもからの手紙にひとつひとつ返事を書いていた」と話し、最後にリンドグレーンが残した言葉の中でもマリンさんがとくに好きだという「子どもたちに愛を。もっと愛を、もっともっと愛を注いでください。そうすれば、思慮分別がひとりでに生じてきますから」のメッセージとともに締めくくられました。
続いてキュレーターの方から本展の見どころ紹介がありました。今回大きく取り上げられているスウェーデン本国版ピッピのイラストを手がけるイングリッド・ヴァン・ニイマンが、じつは日本画、浮世絵の影響を大きく受けていたという話には驚きました。会場内の横断幕で展示されているピッピの家を例にあげ、部屋の中には和風の花瓶があったり、カーテンや食器に市松模様や鱗柄が描かれているとの解説がありました。ぜひ会場で実際に目で見て確かめてみてくださいね!

プレス発表の最後にはスウェーデン生まれのタレント、結城アンナさんが登場。「ピッピは子どもの頃から大好きだった物語。こんな風に大きく取り上げられるなんてとても嬉しい!」とコメント。お気に入りのリンドグレーン作品は『やかまし村の子どもたち』だそうです。本展や図録にはアンナさんのエッセイやイラスト、そしてスウェーデン家庭のレシピも展示・掲載されています。プレス発表の後、アンナさんを近くでお見かけしたのですがやっぱり素敵〜〜!ピアスはおそらくマーダーポーレンかな?(私も最近、ずっと愛用中のブランドで以前お店で偶然お見かけしたことがあるのです)。アンナさんのインスタでも当日の様子がアップされています。

展示会場の入口横で撮影。あ、いま気づいたのですが、横にあるピッピのコスチュームで、自分がピッピになって写真が撮れるんですね!
さて展示会場に入ります。今回監修をされた北欧児童文学翻訳家の菱木晃子先生と一緒に展示を見てまわります。入口には実写版ピッピの動画が流され、会場に入ると愛娘のためにリンドグレーン自身が描いたという世界でたったひとつのピッピが展示されていました。
※会場内は一部をのぞいて撮影不可です。今回は許可を得て撮っています。

本展は、ピッピ、リンドグレーン、そしてリンドグレーンが生み出した小さなヒーローと3つの柱で構成されていて、ピッピのコーナーではリンドグレーンがとくに気に入っていた挿絵画家、イングリッド・ヴァン・ニイマンの原画が中心に展示されています。私はスウェーデンでニイマンの絵を知り、無邪気で可愛いだけじゃない、子ども時代特有のアクの強さというか悪そうな部分もにじませるニイマンの絵が大好きになりました。今回の展示はそんなニイマンの原画がメインといっていいほど充実していて、良い意味で期待を裏切られました!

↑が実際の絵本のイラストで、↓原画の方がさらにワルそうなピッピ。最高です。

初めて見るコミックシリーズ。本展のために菱木先生が訳されたという対訳付。贅沢!

会場では、北欧女子の人気漫画家オーサさんとばったり。「自分も漫画家だから原画を見るのは大好き」とオーサさん。ニイマンのイラストいいですよねと話していると「思えばこういう線画の絵柄は当時人気だったのかなと思います」とオーサさん。なるほど。絵を描く人にとってはまた違う見え方があるのでしょうね。オーサさんによるピッピやニイマン解説も聞いてみたいです。


横断幕の前で一緒に記念撮影。

これがプレス発表会で解説のあった横断幕です。お話にあった鱗柄のピッチャー、市松模様のカーテン、和柄の花瓶をチェック。
他にも1945年に出版された初版本や出版社用ポスター、子ども用雑誌に展示されたピッピのペーパードール(!)などもあってピッピ好き、ニイマン好き、イラスト好きには、もう本当にたまらない。
日本に並々ならぬ興味を持っていたというニイマン。葛飾北斎など浮世絵を模写していたそうで、在デンマーク大使の息子さんを描かせてほしいとお願いにいったというエピソードも! そういえばスカンジナビア系の人たちは「顔立ち(とくに目)がアジアっぽい」と言われることがあるのですが、ニイマンの描く人物ってまさにそうですね。

着物を着た日本の女の子。ニイマンと日本の接点を知り、改めて彼女の作品を見て構図や線画の特徴に浮世絵の影響を見て、ニイマン好きとしてはもう感無量ですよ……。

日本の子どもたちにとってはこれぞピッピ!桜井誠さんのピッピ原画もありました。
ピッピの他にもニイマンが描いた『やかまし村の子どもたち』、ロッタちゃんの挿絵を手がけたイロン・ヴィークランドの原画もあります。イロン・ヴィークランドの優しいタッチのイラストも大好きです。ロッタちゃんと同じく末っ子で、母によく「ロッタみたい」と言われていた私は、ロッタちゃんの物語にはとくに思い入れがあるんですよね〜。ロッタちゃんも、大好きなバムセも原画で見られる日が来るとは。
イロン・ヴィークランドは猫の絵が上手いなあと思います。犬もかわいいし、動物を描くのがが上手いんだな〜

ちなみに今回の展示ではスウェーデン大使館にくわえてデンマーク大使館とエストニア大使館も後援しているのですが、ニイマンはデンマーク人、イロン・ヴィークランドはエストニア出身なんですね。
つづくリンドグレーンのコーナーでは作家活動と並行して、男女平等、大人と子どもの平等、アニマルライツ、そして子どもたちの「読む権利」のために闘った彼女の人生をたどることができます。タイプライターやお気に入りのオブジェなど私物の展示、若き日の写真や受賞スピーチの映像などもありました。

リンドグレーンが生み出したその他の作品も紹介されています。エーミルシリーズのイラストはどこかで目にしたことがあるな、と思ったらノルウェーの『スプーンおばさん』の挿絵を手がけているビョルン・ベルイでした。

展示の最後には結城アンナさんのエッセイ、リサ・ラーソンの陶芸品、宮崎吾朗監督による『山賊の娘ローニャ』などピッピへのトリビュート作品もありました。リンドグレーンとリサ・ラーソンとのコラボレーションは1960年代からスタート。肩にニルソン氏をのせたピッピの初期モデルやエーミルなどの陶製フィギュアが飾られています。本展用に作られた『『馬を持ち上げるピッピ』は、上下さかさまにしてもOKのユニークな作品。ギフトショップで購入することができます。
ギフトショップも公式グッズやニイマン画のスウェーデン語版ピッピなど、充実のラインナップ。これは手ぶらでは帰れない。


コミック画のトートバッグ〜。買えばよかった。

展示で興奮しすぎてお買物の体力があまり残っていなかったのですが、それでもニイマン作品を中心にポストカードやクリアファイルをゲット。そして原画や解説がじっくり楽しめる図録は、ほんと〜におすすめです!

この男の子の表情がじわじわくる……。これだからニイマンの絵、好きなんです。
富士東京美術館での展示は9月24日まで。改めて図録を見返していたら、見逃した部分やもういちど見たい展示もあって、また行きたくなりました。ちょっと遠いんですけれど、ね!スウェーデンに行くと思えば近いもんです(そこと比べるか)。

これは12年ほど前の写真なのですが、スウェーデンで参加したダンスキャンプでの「スウェーデン」をテーマに参加者みんなで仮装パーティをした時の一枚。ピッピに扮したダンスの先生はピッピを真似て腕相撲コーナーをやってました。そして先生の家族もみんなピッピ。これぞスウェーデンです!
最後に拙著のご案内も。『北欧おみやげ手帖』ではニイマン画の絵本やポストカード、蚤の市で見つけたニルソン氏のぬいぐるみなど、スウェーデンをはじめ北欧でみつけたおみやげを紹介しています。ぜひ合わせてご覧くださいね。


北欧おみやげ手帖 12年間の「これ、買ってよかった」
森 百合子 著
¥1,400 + 税(2017年9月29日発売)
出版社 主婦の友社