5/20公開!『a-ha THE MOVIE』を観て自分の推しを振り返る

いま推し活が注目されていますけれど、そんな言葉が生まれるはるか前、35年前からa-haのファンとして推し活をやってきた方々が心底羨ましくなる。『a-ha THE MOVIE』はそんな映画なのです。私がかつて熱中した忌野清志郎も、BOGUMBOSのどんともすでに他界してしまっており、二人とも亡くなる前よりずっと早くバンドはなくなっているので、好きなバンドがいまも続けているというのはただもう羨ましい、でも同時に「このたびは本当におめでとうございます!」とファンのみなさんに祝福を寄せたくなってしまう、そんな映画なのです。自分の好きなバンドが、音楽が、人々がこんな風に続いていくって奇跡だし、たとえ自分の推しでなくても勇気づけられるし、幸せな気持ちになる。a-ha 素晴らしいな……。

じつは結構a-haのファンだったという夫が「a-haって北欧神話の神々みたいだな」とつぶやいたので、そうか北欧神話の神ね。ええ〜じゃあロキは誰だろう?うーん、消去法だとポールかなあ。ロキのような邪悪さはまったく感じないけれど、自分の心に正直すぎるあまり、結果的にまわりを引っ掻き回してしまうところとか。

マグネはやっぱりソーですかね。なんといってもマグネだしね(Netflixのラグナロクのネタです)。歴代ソーのビジュアルイメージにも近いし。ポールと昔からの仲よしということでも、やっぱりマグネがソーだね!

さてじゃあモートン。やっぱりオーディンですかね。目立つし。中心的だし。自分自身への絶対なる信頼とか、それでいてみんなのことを考えている一方で、めちゃ天然なところとか、ちょっと神経質っぽいところとか。そういえば3人とも妻&パートナーに頭があがらなさそうな感じも神々っぽいです。

本作については見どころがどうこうというよりも、a-haの存在がすごいの一言に尽きるのですが、『Take On Me』という稀代の名曲が、あのカッコ良すぎるPVも含めてどうやって作られていったのか舞台裏をのぞけるのは面白かった(そんなんアリなんだ!?って思いました)。あんなヒットの仕方をして大人の思惑もあれこれ凄まじかったろうに、3人それぞれが失敗も受け止めて、また淡々と前に進んでいくのもいい。そしてドラッグに溺れたり、音楽性の違いで決裂したり、命を落とすことがバンドマンのかっこいい生き様みたいな風潮を、なんとなくそのまま受け止めていた自分の浅はかさに改めて気付かされてしまった。

本作、映画としてのクオリティも素晴らしい。ビッグネームでバンド映画なのでついついボラプ(って呼ぶんですね!ボヘミアン・ラプソディです)と比べてしまうんですが、思えばボラプは随分と消化しやすい構成だったよなと思います。フレディファンの友人が怒っていましたけど、確かにあれは生き残ったブライアン・メイとロジャー・テイラー側からの視点しかないんだものなあと、『a-ha THE MOVIE』を観て思いました。本作は3人からそれぞれ、しかも微妙に距離や時間を置きながら聞いているのでドキドキするし、けっして消化しやすいストーリーじゃない。仲がいいとか、信頼しあっているとか、そういうわかりやすさを越えた関係の力強さが生々しくて、こんな映画を世に出してOKというのが3人の関係の力強さを物語ってる。

天から与えられた自分の才能を1ミリとして疑うことなく世界と共有してくれるモートンはマジで神だし、「モートンが目立ってくれてよかったー」と話すマグネとポールの関係性も最高で、これまたバンドといえば目立つボーカルがソロ抜けして関係が悪くなる、みたいなストーリーをすぐ思い浮かべてしまう自分の浅はかさを反省しきりですよ!ペンキヘアに始まり、モートンのファッションチェックも楽しいし(上腕二頭筋ならびに三角筋を見せつけるカットの服が好きですよね)、健康的に歳をとって、音楽を続けて、ただひたすらに良い音楽を目指す。こんなに安心して推せるバンド、地球に他にいるんでしょうか。そんなa-haの特異性はやはりノルウェーという国の国民性に関係しているのかなあとか、北欧贔屓としては思ってしまいます。

そうそう細かいことですけど、ファンと会った後のシーン、コロナを経験した身にはモートンの心情が少し理解できてしまうのが不思議でもありました。天賦の才能っていうのは、ああした日々の気遣いで守られているのだよなあと。そしてそういう部分はあまり世間(凡人)には理解されない。

推しといえばスキージャンプの葛西のことも思い出してしまった。ブログでノルウェーのことも書いてたし。葛西も長いよね。そして彼がまた金メダルをめざすと言えば、ファンはみな本気で応援して夢を見てしまうんだ。ちなみに私はトリノの頃からの葛西のファンなので葛西は葛西と呼び捨てにしています。レジェンドとか呼べない。でもモートンとマグネとポールのことは神と呼びたい。a-haは神であり奇跡。

a-ha THE MOVIE