まさかの続編『ヘヴィ・トリップⅡ 俺たち北欧メタル危機一髪!』の気になるポイント
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まさかの続編がやってきた!フィンランドの爆笑必至なメタル映画『ヘヴィ・トリップⅡ 俺たち北欧メタル危機一髪!』。2019年に公開された前作『ヘヴィ・トリップ 俺たち崖っぷち北欧メタル!』は、日本では異例のヒットを記録。『ヘヴィ・トリップⅡ』の公開にあたっては、フィンランドから主演4人が来日したりと今回もまた異様な盛り上がりを見せています。好きな方は何回でもおかわりするであろう本作。物語を彩る北欧あるあるネタも、知ってから見るとまたおもしろいかもしれないので、ちょっと書き留めておこうと思います。
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◎やたら居心地のよさそうな刑務所
ノルウェーの刑務所って居心地よさそう、とは日本でもたびたび話題になっています。素敵な居室にリビングルーム、適度に自由が与えられた生活。図書館やジムなどもあるそうですが、本作でも元図書館勤務のクシュトラックスが本の整理をしていましたね。孤島にある刑務所は、ノルウェーのバストイ島の刑務所をイメージしているかと思われます。バストイ島にはその昔、少年矯正施設があって、そこでひどい虐待が行われていたことが少年たちの反乱事件により明るみに出ました(『孤島の王』というノルウェー映画で凄惨な状況が描かれています)。でも現在はすっかり生まれ変わり、世界でも有数の「居心地のいい」刑務所となったようです。本作でも「優良刑務所だよ!」とやたらアピールしてましたね。
◎刑務所の食堂で並んでいた食べ物
サーモン
ノルウェーサーモンは日本でも有名ですね。ノルウェーは水産王国でサーモンやタラ、ししゃもなども日本に輸入されています。ノルウェー本国でもサーモンはよく食べます。伝統料理の店でも、オープンサンドでも、現地のSUSHIレストランでも、とにかくよく出てきます(でもあんなに分厚い切り身ではありません)。フィンランドでもよく食べるくせに「サーモンばっかりだな!」とロットヴォネンが言ってたのは、ノルウェーっていうと「サーモン、以上終了」みたいな感じがあるのかもしれません。
ザリガニ
ビュッフェの右の方に並んでいたのが赤いザリガニ。北欧では夏にお酒をぐいぐい飲みながらザリガニパーティをするのが伝統……なのですが、それはフィンランドとスウェーデンの話。ノルウェーではあまり聞いたことがありません。ノルウェー人いわく「ザリガニパーティは、おいしい甘エビがとれない国がやること」だそうですが、トゥロたちのようにフィンランド人の囚人もいることですし、配慮の行き届いた刑務所として揃えているのかもしれません。
甘エビ
ザリガニの影に隠れてましたが、甘エビもありましたた。ノルウェーの甘エビって、超おいしいんです。延々と食べられます。夏になると甘エビをひたすら食べるシュリンプパーティもします。
ニシンでなんか巻いたやつと、なんかでニシンを巻いたやつ
ノルウェーをはじめ北欧各国ではニシンもよく食べます。ノルウェーは石油で豊かになる前はニシン漁が経済を支えていました。魚といえばとりあえずサーモン、そしてニシンが出てくるのが北欧です。
◎リトアニアのフェスへの行き方
脱獄してドッケンさんの車を奪い、なんとかリトアニアのフェスに出ようとするメンバーたちが向かったのはヘルシンキの港です。ヘルシンキから、対岸にあるエストニアの首都タリンまではフェリーで行くことができます(国境を超えるので乗船にはパスポートが必要になります)。そこからラトビアを横断してリトアニアへ向かったと思われますが、エストニア、ラトビア、リトアニアはバルト三国と呼ばれています。フェリーには車両ごと乗ることができるのですが、ブラッドモーターズが乗っていたような、あんな大型バスまで乗れるとは知りませんでした。
◎オウラの扱い
「ブラックメタルにブラックスピリットを」的なTシャツを着ながらも、「アフリカ行ったことないけど」「ラップランド出身だから」と「黒人だけど〜」ネタでおなじみオウラ。演じるチケ・オハンウィは父がナイジェリア人、母がフィンランド人でフィンランド育ちのようです。ラップランドを舞台にした映画『AURORA』でも、誰よりもフィンランド人らしく振る舞おうとする役で、ユッシ賞(フィンランドのアカデミー賞みたいなの)最優秀助演男優賞を獲得しています。
◎ドッケンさん
前作につづいてインペイルド・レクタムの前に立ちはだかるノルウェーのいかれた女性、ドッケンさん。本シリーズの盛り上がりに、ドッケンさんの存在はかかせません。暴力大好き、武器大好き、戦争大好きドッケンさん、前作ではバズーカ砲みたいな武器に「アルマンド」って名前を付けてましたが、今回は車に「アンジェロ」って名前を付けてましたね。前作では、中東っぽいコスプレをしたパーティ帰りのグループをテロリストと決めつけ、誤認逮捕で服従させた上で自分たちは満面の笑顔で写真を撮るという、なかなかにヤバい軍人仕草をキメています。オウラの扱いといい、本作では際どい(が、わかりやすいブラックな)笑いを投げ込んできますが、こういう胸焼けしそうな”男らしい”振る舞いを女性が演じているというのも、そのひとつでしょう。
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フィンランドって日本では「しあわせの国」「おしゃれ」「かわいい」と評されることが多いのですが、北欧の他の国々からはよく「酒飲み」とか「変人」扱いされています。一方のノルウェーは、北欧の兄貴分とされるデンマークやスウェーデンとともにスカンジナビア3国のひとつ。スカンジナビア半島を中心とする北欧3国とフィンランドでは言語ルーツも異なり、近いようでいて理解しあえない溝もある。ただノルウェーは歴史的にデンマークに統治されていた時代もあったりと、スカンジナビア3兄弟のなかでは弟分扱いです。フィンランド人はスウェーデン人やデンマーク人を「お高くとまっている」と描くことはあっても、いかれた国扱いはあまりしないので、本作を見ていると「そうかノルウェーはおちょくってもいいんだな……」と、北欧の国の間のパワーバランスを垣間見るようで面白いです。
さて最後に、フィンランドに興味を持ってしまったであろうヘヴィトリッパーのみなさんにぜひおすすめしたい、フィンランド映画+ノルウェー映画をご紹介しておきます。上3つはアマプラで見られます。
『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』
長すぎるリーゼントがトレードマークのロックバンド、レニングラード・カウボーイズ(フィンランドのバンドだけど、映画では旧ソ出身ということになっている)。死んだバンドメンバーの棺桶をかついでアメリカ縦断、メキシコを目指すロードムービー。旧ソ連ネタ、アメリカのロックやジャズ聖地めぐりと情報量がだいぶ多いが、何もわからなくても楽しめるのはヘヴィトリップと同じ。
『SISU』
絶対死なないフィンランドの爺さんが、ナチスの残党をやっつける話。フィンランド版ジョン・ウィック(たぶん)。
『カラマリ・ユニオン』
全員がフランクという名前の15人の男たちが、フィンランドの首都ヘルシンキで、カッリオ地区(労働者の町)からエイラ地区(富裕層の町)を目指すがなかなかたどり着けずに人が死んだりする話。風刺がきいてナンセンス、しかし映像はヌーベルバーグ風という謎の名作。
『白夜のタンゴ』
アルゼンチン人のタンゴミュージシャン3人組が「タンゴはフィンランド生まれだ」と言い張るフィンランド人にそそのかされて(?)ブエノスアイレスからフィンランドへ旅して、ほのぼのしたり、フィンランド式タンゴに出会ってカルチャーショックを受ける話。
『ロスバンド』
ロックフェスを目指して少年少女が旅に出る、ノルウェー発の青春音楽ロードムービー。主人公の少年少女はけなげで爽やか、背後に映るノルウェーの自然も壮大で爽やか。しかし、いかれたノルウェー人がしれっと出てきます。
ほ〜ら、あなたはもっとフィンランド映画が観たくなってきた!でしょう!それではモイモイ〜(フィンランド語でバイバイ)




