『Marimekko Spirit -Elämäntapa マリメッコの暮らしぶりー』展&トークショーレポート

東陽町の竹中工務店本社内にあるギャラリーエークワッドの『Marimekko Spirit -Elämäntapa マリメッコの暮らしぶりー』展に行ってきました。エラマンタパとはフィンランド語でライフスタイルを指す言葉。テキスタイルだけでなく生活道具も手がけ、日常にデザインの力を伝えるマリメッコ。そのマリメッコ監修によるサウナと茶室が見られるユニークな展示です。

会場に入ると奥にはグリーンの壁の茶室が、手前には白木作りのサウナ小屋があります。茶室の前には石庭があり飛石が敷かれ、サウナ小屋の前には木片が敷きつめられ、両脇にはマリメッコのテキスタイルが飾られています。石庭とマリメッコの組み合わせは妙にしっくりときます。

にじり口(茶室の小さな入口)から茶室をのぞくと内側の壁にはヴォッコ・ヌルメスニエミがデザインしたノッパ柄が。床の間の掛け軸(!)も、もちろん茶器もマリメッコ。布に『真理庵』と綴られた書が掲げてあります。茶室は靴を脱いであがることもできます。

サウナ小屋には横長の窓があり、中から見ると窓の外に飾られたテキスタイルが森のように見えます。会場にあった説明によるとその昔、日本では汗を流す軽い入浴の後に茶室へ行く『林間(もしくは淋汗)茶の湯』という趣向があったのだとか。

さて、この日の夜にはフィンランドから来日していたマリメッコのプロダクトディレクター、ミンナさんとデザイナーのサミさんによるトークイベントがありました。お二人は今回の茶室のデザイン監修をされています。マリメッコの歴史や考え方、そして今回の展示について1時間半ほどたっぷりとお話いただきました。フィンランドの雰囲気を感じて欲しいと、トークはフィンランド語で行われました。

まずはマリメッコの歴史から。ミンナさんは創始者であるアルミ・ラティアの言葉を引用し、「戦後の貧しかったフィンランドに強いプロダクトをもたらそう、人々に希望を与えるようなものを作りたいというアルミの思いからマリメッコが生まれました」と説明。「この時代において自由に将来を考えられること、自分らしくあることを伝えることはとても意味のあることだったのです」。ミンナさんとサミさんは、写真のアルミ・ラティアと同じヨカポイカのシャツを着ていますね。

マリメッコの代名詞ともいえる柄、ウニッコについての秘話も。もともと創始者のアルミ・ラティアは「デザインに花柄を使ってはいけない」と禁じていたのはその筋では有名な話。アルミ曰く「花は自然の花が一番美しく、自然にある花と競争するようなことをしてはいけない」と。

それでもマイヤ・イソラはあえてウニッコ柄を提案します。「正しいやり方で表現すれば、競争にはならない、とアルミに見せたかったのでしょう」とミンナさん。「アーティストとは、やるなと言われたことをやってしまうものです。」との言葉にもうなずきます。ウニッコは『禁じられた花たち』と名付けたコレクションとして発表されました。

もうひとつマリメッコを代表する柄としてタサライタが紹介されました。来年50周年を迎えるこのストライプ柄は社会における平等を表しています。「平等とは男女だけでなく、大人と子どもの間でもそうですし、社会における平等のシンボルとして生まれた柄なのです」とミンナさん。タサライタはもともとジーンズの上に着る柄として作られたとか。シンプルでどこにでもありそうなのに、マリメッコらしい柄。本当にジーンズによく似合いますよね!

今回のトークで面白かったのは「マリメッコとは対極のコンセプトの上に構築されるもの」という話。例えばマリメッコの服は街中だけでなく自然の中でも着てリラックスできます。都会と自然。この2つの対極する要素がマリメッコには活かされていて、「両極にある存在の対話がお互いを輝かせる」というマリメッコのコンセプトはフィンランドらしいなあと思いました。思えばフィンランドの人って極端な要素が内在している印象があるのです。シャイなのに大胆だったり、デザインにしてもとても落ち着いた要素と、鮮やかで尖ったアイデアが共存しています。

そして何よりマリメッコにとって重要なのは人であるとミンナさんは言います。その時代ごとの人々がマリメッコを活かしている、と。単なる製品やデザインではなく、人との対話があってのマリメッコなのだと。

今回の茶室とサウナにも深く関係しているマリキュラについての話もありました。マリキュラとはアルミ・ラティアが描いていたユートピアで、フィンランドのポルヴォーにマリメッコの村を作るのがアルミの夢でした。
マリサウナはマリキュラにおけるビジネスモデルのひとつで、サウナスペース、着替えができるリビングのような部屋、そしてベランダとモジュールタイプの3つの箱が連なり、桶やタオルなどすべてをマリメッコでトータルにデザインしたサウナを考案していました。マリキュラもマリサウナも実現はしませんでしたが、ポルヴォーの海岸沿いにアルミは邸宅を作り、人が集い交流ができる場所、催し物もできるスペースとしてその夢を叶えました。

確かにフィンランドのサウナってリビング兼着替えができる部屋が隣接し、ベランダがある、3つの箱でできたスタイルをよく見ます。

2000年代から作られたニュークラシックについての解説もありました。古い物を組み合わせて新しいプロダクトを作るこの試みではマイヤ・イソラのデザインを新しいプロダクトにしたり、日常生活やインテリアに役立つ、マリメッコらしい新たな製品が考案されました。そうした流れの中でサミさんが作ったのが食器のオイヴァシリーズです。

サミさんによるとシリーズのコンセプトにはアルミ・ラティアが残した言葉「put people together」があるとのこと。上の写真はアルミが人を招いて食卓を囲んでいるところ。アルミはこうして社員や友人たちと食卓をともにすることを好んでしていたそうです。そんなアルミの意志を継ぎ、人々をつなぐものとして、人々が集う食卓のためにオイヴァシリーズが生まれました。絵柄はマイヤ・ロウエカリが担当しています。「それまでのマリメッコではデザインありきで、それがテキスタイルになり、製品になっていったのですが、今回はその逆。何が必要か?から始まり、プロダクトが決まり、そこに合わせてデザインが作られた。」というマリメッコのアプローチの変化についても説明がありました。

トークの最後にはフィンランドらしいデザインとは季節の移り変わり、四季からインスピレーションを得ることが多いとの話がありました。たとえば冬が長いので、暗闇の中で少ない光を活かせるデザインであること。また現在、銀座のgggで同時開催されているMarimekko Spirit展でスポットがあてられているアイノ=マイヤ・メッツォラとのプロジェクト、ウェザーダイアリーについても紹介がありました。
「フィンランド人は天気の話をよくするの。日本でもそうかもしれませんね。アイノはスオメンリンナ島で暮らしていて、天気がすぐ変わることを体験として知っています。どの食器に、どの天気がふさわしいかもよくわかっている。プレートには空、カップには雲といった具合にね。自然をどう解釈するか、フィンランド人の自然との関わりや自然への理解の深さは日本とも通じるものがありますね」とミンナさん。


自然(おそらくスオメンリンナ島?)の中で撮影されたウェザーダイアリーのプレート。gggギャラリーではこのシリーズの原画も含めて展示しています。

トーク後の質疑応答では、フィンランドで人気のある柄は?との質問が。とくに人気があるのはマイヤ・ロウエカリによる「シィールトラプータルハ(市民菜園)」だそう!同デザイナーのラシィマットも人気が高いそう。もちろんウニッコをはじめカイヴォ、ロッキ、マーライスルースなどマイヤ・イソラのデザインした柄は常にとても人気があるとのことでした。

「2つの対極を共存させるというのはマリメッコならではのアイデアですか?」との質問には「一面にはそうであると言いたいけれど……フィンランドでは冬が長く、夏へのあこがれが強い。冬に夏を思うような内から沸き起こる感情のようなものはフィンランド人が本来持っているものかもしれませんね。」とミンナさん。

最後にサミさんから「日本の茶道具はそれぞれの器に用途や意味がある。フィンランドの器は実用的なもの、マルチな使い方ができるものが多い。今回の展示ではマリメッコの器たちが新しい使い方を与えられてとても嬉しく思っています」との言葉でトークショーは締めくくられました。

ギャラリーエークワッドでの展示は2018年2月28日まで。トークに登場したアイノ=マイヤ・メッツォラやマイヤ・ロウエカリなど3名のデザイナーにスポットをあてた『Marimekko Spirit展』と合わせて見るのがおすすめです!銀座のgggでのMarimekko Spirits展は1月13日まで。この後、この2つの展示が合体して各地をまわるとのことです。