11/20(金)公開。神の視点は健在!ロイ・アンダーソン新作『ホモ・サピエンスの涙』

さあロイ・アンダーソンファンのみなさま、5〜6年に一度の祭りがやってきましたよ。ロイ・アンダーソンの新作『ホモ・サピエンスの涙』がいよいよ公開です!

スウェーデンを代表する名匠であり、昨今は『ミッドサマー』のアリ・アスター監督や『バベル』『レヴェナント』のイニャリトゥ監督が敬愛する先人としてもその名を知られているロイ・アンダーソン。寡作ながら新作が届くたびに世界の映画祭で話題を集め映画ファンが熱狂する、もはや生き様もアートのような監督です。

さてロイ・アンダーソン5年ぶりの新作『ホモ・サピエンスの涙』。前作『さよなら、人類』『愛おしき隣人』『散歩する惑星』に続いて今回も邦題がいいぞ。惑星→人類ときて次はどうなることかと思っていたら、ホモ・サピエンス。さすがです。そう、ロイ・アンダーソン作品って、人類とか惑星とか、ちょっと大げさなくらいのスケール感を漂わせる言葉がよく似合う。なぜなら監督の視点が神のようだから。

上記3部作に続いて、本作もまた悲喜こもごもの人生模様をショートコントのような簡潔さで織り上げていきます。ええ、今回もありますよ。一瞬にして人を恐怖に突き落とすようなシーンも、そして幸せとはこういう時間のことを言うのだろうかと泣きたくなるような珠玉のシーンも。そしてそれをドラマというよりもコントのように見せるのがロイ・アンダーソン神。神の目にはこのように人間が映っているのであろうかと思わせるその視点は健在です。

これまで通り、今回もほぼオールシーンがセット撮影!よっ変態!と言いたくなる作り込み。駅舎のシーンも市場やバーのシーンも、「いやこれ普通にスウェーデンに現存する建築や内装じゃないですか……」と突っ込みたくなるほど完璧。だから作る必要なくね?と毎回思わずにいられません。いやーロイ・アンダーソンの変態ぶりに比べたらアリ・アスターもまだまだ可愛いもんだね!と思ったりする。そんなロイ先輩の映画作りへの異常な愛情については公式ページやSNSで発信されているのでぜひチェックしてみてください。面白いから。

私が思う本作の見どころは、監督の視線に過去作よりもなんというか熱がこもったような、ところどころ監督の若き日の情熱を感じるシーンがあるのですよ。前述しましたが、ロイ・アンダーソンて、その淡々と俯瞰できる眼差しに時々もしかして本当に神かな?と思っちゃうんですけれど「あ、神じゃなかった。人間だった!」と思うシーンがね、今回は随所にある。

『ホモ・サピエンスの涙』劇場パンフレットではそんなシーンについて、監督が若き日を過ごしたスウェーデンってどんな時代だったの?といった視点も交えてじっくり考察・解説を寄せていますので、ぜひ合わせて読んでいただけたら嬉しいです!

そして本作、ところどころコロナの時代を映すような場面があります。それは人との距離感であったり、未来への諦念だったり、希望であったり。うーん、やっぱり神なのかな〜。神というものが本当にいるとしたら、ロイ・アンダーソンみたいな優しく厳しくおちゃめな存在だったらいいのになあ!と私は彼の作品を観るたびに思います。

ロイ・アンダーソン御年77歳。これまでのペースだと次作は80代での発表になるのでしょうか。イギリスの至宝ケン・ローチのように、ロイ・アンダーソンにも80代に突入してもなお進化し、攻め続けてほしい。私、一生ついていきます!

『ホモ・サピエンスの涙』公式ページ