映画『ベルイマン島にて』に登場する家具と北欧インテリアの話

GWの初日、4月29日にシネスイッチ銀座で行われた『ベルイマン島にて』公開記念トーク。北欧ぷちとりっぷの北欧男子トークでおなじみのスウェーデン出身ペッターと一緒に登壇してきました!雨の中、第一回目の上映後と早めの時間ながらたくさんの方にご参加いただきまして本当にありがとうございました。

配給の方から事前に質問を幾つかいただいていたのですが、ぜひ詳しく知りたいと要望があったのが、登場した家具やインテリアについて。そうなんです、コメント寄稿でも書いてますがこの映画に出てくる家がいい。空間がいい。トークでお話した家具やインテリアについて、せっかくなのでこちらにも記しておこうと思います。

【登場した名作家具】
・ハンス・J・ウェグナーのYチェア

デンマークを代表する家具デザイナー、ウェグナーによる世界でもっとも美しい椅子、もっとも売れている椅子と紹介されることも多い一脚。北欧名作椅子の筆頭で、背もたれがYの文字に見えることからこの名で呼ばれています。クリスとトニーが滞在する家のダイニングに何脚か置いてありましたね。

・ブルーノ・マットソンのペルニラチェア
スウェーデンが誇るデザイナー、ブルーノ・マットソンが手掛けたパーニラチェアもクリス&トニーの家のリビングに。ベルイマンサファリに参加せず、地元青年と過ごしていたクリスがトニーにそのことを報告するシーンでちらっと映ります(腰掛けてるソファでなはい)。脚の形が独特で、座り心地も最高の一脚。

・イームズのラウンジチェア
ベルイマン自邸で存在感を放っていたのが黒い革張りのオットマン付きチェア。イームズによるデザインはミッドセンチュリーど真ん中のスタイル。ちなみにイームズは北欧デザインとの相性もよいのでよく一緒に語られることが多いのですが、アメリカのデザイナーです。

・ビルゲル・ダールの照明バーディ
トニーの仕事机にあった黒いシェードのデスクランプは、ノルウェーのデザイナー、ビルゲル・ダールによるもの。名前のとおり鳥を思わせるフォルムがユニークです。ちなみに、こうした可動式アームのデスクランプはノルウェーの照明メーカーが一般に普及させたと言われています。

・レ・クリント社のクラシックブラケット
ベルイマン自邸の図書室にはデンマークの照明メーカー、レ・クリントを代表するブラケット照明も。プラスチックペーパーを織ったシェードが特徴的です。

北欧映画あるあるですが、本作も「この部屋にいったいいくつの照明があるんだ?」状態でしたね。名作デザイン以外にもクリス&トニー部屋のダイニングのペンダント照明、ベッド脇のライト、スタンドライトなど素敵な灯りが次々に出てきて照明好きとしては眼福! そうそうクリスの仕事机の上にあるデスクライトは、ほぼ同じ型がわが家にもあります(蚤の市で見つけました)。

ほかにもクリス&トニー部屋の角には、昔ながらのタイル貼りストーブがあったり(陶製のタイルが熱を長時間保温してくれる)、ダーラナ地方に伝わるモーラ時計、グスタヴィアンスタイルの椅子など、スウェーデンらしい家具もありました。グスタヴィアンとは時の王様グスタフ3世がフランスのルイ王朝などの調度品に影響を受けて作らせたという家具のスタイル。サマーハウスや古い家の定番家具であり、特徴的なデザインはイケアなどの現代家具に取り入れられていることも。

ベルイマン邸でも、ミッドセンチュリーの名作デザインとともに置き時計や寝椅子(ソファベッド)など古き良き時代の家具がしっくりとなじんでいるのが印象的でした。トークでもお話しましたが、あの部屋を見ていたら気難しく意地悪な印象が強かったベルイマンがなんとなーく「もしかしていい人?」なんて思えてきました。スウェーデンではよく「家はその人を表すもの」といいますが、最後の妻イングリッドとこの島で、この家で、心穏やかなよい時間を過ごせたのだろうな〜なんて。ペッター先生は「古い家具をそのまま使っている家は多いけど、この映画に出てくる家はスタイルがあっていいね」と話していました。

トークショーでは、スウェーデン人にとってのベルイマンとは?夏の過ごし方は?なども話しましたが、やはり現代っ子ペッターのベルイマン評は「作品は素晴らしいかもしれないけど、彼みたいな女性観はいまでは受け入れられない。あれじゃ結婚できないよ!」とバッサリ。本作の主人公クリスの「いい作品を作る人にはいい人でほしい」という意見と重なるところがありますね。

本作におけるインテリアを通して、またクリスのような視線を通してのベルイマン考察は、劇場パンフレットにも寄稿していますのでご興味のある方はぜひご覧ください。

『ベルイマン島にて』公式サイト